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2009年8月15-16日 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1泊2日 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
長い事、いつかは行きたいと思っていた富士山頂へ、富士登山についに出掛ける事になった。 仕事の都合上、どうしてもお盆休みしか行くチャンスがなく、仕方なく15日、16日という日時を選んだ。パートナーはインドで知り合ったたくぞー君(詳しくは外部サイト:旅日記インド編を)。京都から名古屋まで来てもらい、14日の午後10時半、名古屋を出発する。 富士山はその標高ゆえに、登山できるのは7、8月の2ヶ月だけとなる。それ以外の時期は、雪などによりベテランの登山者以外は難しい。登山道は全部で4つあるが、今回は一番難度の高い「御殿場口」を選んだ。理由は御殿場口は土日やお盆でもそのハードさから混雑がなく、ゆっくりと山を登れるからだ。難度が高いのは、ドンと来い、だ。
高速道路を東へ走る。 実は、数日前に静岡県で震度6の地震が起こり、東名の一部が崩落してしまっている。現在も袋井〜焼津間で不通となっている。ETC割引で1000円で高速が利用できるのはありがたいが、どうやら今回は時間が掛かりそうだ。
高速に再び乗ることができる焼津インターまで、国道1号線を走る。ここがかなりの渋滞。元々細い道の上、高速からの迂回組みがなだれ込んでいる。一番眠い時間帯に、一番たらたらと運転して、再び高速へ入る。抜けるのに2時間以上近く掛かった。 御殿場口の駐車場に辿り着く。時刻は5時半。7時間ぐらい運転していた事になる。到着と共に仮眠。 30分ぐらいで携帯の目覚ましが鳴る。早い仮眠だった。。遅くても7時には出発しなければならない。登山の準備に取り掛かる。 ところで周りは霧だらけ。天気予報ではここ数日は快晴のはずだったのだが、空は真っ白。雨というよりは濃い霧という感じだ。周りの人もレインウェアを着ている人も見かける。とはいえ、ここで引き返すわけにも行かず6時40分、いざ出発。 登山道は砂や小石が混じる砂礫で、サクサクと音を立てながら歩く事ができる。思っていたよりも歩きやすい。周りはまったく視界が利かないが、ロープや看板などがあったりして道に迷う事はない。 10分ほどで大石茶屋に到着。気温は23度、涼しくて歩くにはちょうどいいぐらいだ。ここで金剛棒を購入(1000円)。まだ疲れはないので、休憩はとらず先に進む。 それにしても何も見えない。 真っ黒な砂礫と真っ白な霧のみの世界。次の目的地は標高1920mの次郎坊。地図によると1時間40分の道のりだ。 登山者は少ない。誰にも追いつかないし、抜かれない。それよりも真っ白な霧の中、何も見えない。幸い登山道はしっかり踏みならされているので道を迷う事はないだろう。
8時30分、次郎坊到着。本来ならこのあたりの景色はもの凄く良いはずなんだろうが、残念ながら霧の一色。登山道も登り一辺倒で、休憩も傾斜の場所でしなければならない。砂ばかりで座れるような石もない。 「凄いところだ」 これで川でもあればまるで三途の川のようだ。視界もない。音もない。動くものもない。永遠と続く砂礫の道を登る。「自分との戦い」、御殿場口登山はまさにそんな言葉が良く似合うと思った。
9時15分に旧二合八勺非難小屋を通過(気温21度)。一時的に霧が晴れたりして、下山者の姿も見える。大砂走りをしているようだ。ただし、寝不足と疲れで既にそれらをしっかり見ている余裕もない。
ひたすら登る。ざくざくとゆっくり登る。まだそれ程標高は高くないので、酸欠で苦しくなる事はない。ただ登りがひたすら続くので、疲れと足の負担は結構なものだ。また、砂が多い場所は足に力を入れた途端、ざざっと滑る。これがかなり体力を消耗させる。ゆっくりと足取りはしっかりと登らなければならない。 ここらから六合目小屋(休業中)までがかなり長い。 何の目印もなく、霧なので視界もなく、単調な道が続く。時々霧は晴れるのだが、喜んでいるとすぐにまた霧雨となって襲ってくる。レインウェアが必要だ。霧雨で服や髪はベタベタになっている。 くらくらになりながら、ようやく六合目小屋(新六合目/気温14度)に到着。標高は2590m。少し寒いぐらい。12時半近くになっていたので、ここらで昼食にすることにした。 と、ここでバックパックを開けて凍りついた。 冷えた体を温めようと暖かい物を食べる為、今回はガスコンロを持ってきたのだが、何とクッカー(鍋)を車に忘れてしまった。。。これでは水が沸かせない。カップ麺もコーヒーも飲めない。。しまった。水も4Lも持ってきたのに、まったくの無駄になりそうだ。。 落ち込んで残っている菓子を食べていると、たくぞー君がおにぎりを恵んでくれた。ありがたい。 山小屋と言ってもこの御殿場口の小屋は、7合目まではまったく営業しておらず、食料・水の補給、トイレ休憩もできない。厳しい登山道だ。 再び出発。 この辺りになると時々霧が晴れてくる。しかしこれは霧というよりはもしかして「大きな雲」なのかも知れない。麓から続く、富士山を覆う大きな雲。そんな気がしてきた。その証拠に、霧が晴れると雲海となる。知らない間に結構高いところまで登ってきているようだ。 14時過ぎ、六合目に到着(気温16度)。 霧が晴れてきた。初めて、ここで初めて目指す富士山頂の姿を拝む事ができた。休憩がてらバックパックを下ろし、一眼レフで山頂を狙う。
「ああ、綺麗だ」 初めて姿を現した富士は、真っ黒だった。真っ青な空に、真っ黒な頂が見える。しばらくするとまた霧が出てきて見えなくなってしまったが、改めて富士の大きさを実感する事になった。 この辺りから霧が晴れたり出たりし始めてきた。15時半には七合目である日の出館に到着(気温12度)。かなりくらくらだ。既に9時間近く登り続けている。目的は8合目だから、もう一合。手持ちおお菓子を少しずつ食べながら、無心で登る。 疲れよりも足全体に広がる痛みに耐えながら、わらじ館、そして七号五勺にある砂走り館に到着(15時50分/標高3110m/気温18度)。ここまで来ると、もう霧は晴れていると言っていい。雲海が壮大に眼下に広がる。美しい景色を眺めながら、少しだけ椅子に座り休憩する。ここで宿泊する人もいるので、小屋の前では夕飯のカレーだろうか、とてもいい匂いがしてくる。そろそろ限界だな、、と思い始めてくる。めざす赤岩八合館はまだ先だ。
砂走り館を過ぎると、いよいよ今日最後の登りだ。 目の前に急で長い坂が立ちはだかる。そしてその先に小さく小屋が見える。あそこがゴールだ。 ゆっくりゆっくり登る。既に足元は砂礫ではなくなり、りっぱな岩がたくさん転がっている。ほとんどが溶岩だが、気をつけていれば砂礫の道よりも登りやすい。 酸素もやや薄いと感じる。だが、標高5000mを越えるエベレスト・トレッキングを経験しているので、あれに比べればまだ「濃い」と思える。あれは本当にきつかった。
疲れた。。本当に疲れた。山小屋になだれ込むように入る。 中は既に大勢の人で賑わっていた。さすがお盆である。多くの個人客に、集団を作っているツアー客。それを率いるガイド等など。 名前を告げるとてきぱきと宿の人が今日の寝床を教えてくれた。 狭い。。 少し大きめの布団に大人3人である。横になると、辛うじて肩が当たるかあたらないかぐらいの幅。寝れない事はないが、お盆の富士山の山小屋の混雑振りを改めて思い知った。 宿泊費(6500円+トイレ代200円)を払い、ひとまず外へ。小屋の前は細い道になっており、そこにベンチもある。そしてそこからの眺めがすごい。 すごいもんだ。これまでこの雲の中を歩いて来ていたんだ。霧じゃない。雲だったんだ。この風景を見て今日の疲れが一時的に吹っ飛んだ。 下界から持ってきた缶ビールを取り出す。ちょっと生ぬるくて寒いが、今日無事到着できた事を祝い乾杯する。 すると他の登山者が教えてくれた。 「影富士が出てるよ」
こんなに目の前にあったのに、まったく気付かなかった。何と見事なのだ。改めて富士の大きさを実感する。 団体の食事が終わってから、いよいよ食事の時間となった。ここ赤岩八合館では夕食はカレーなのだが、何とお代わりし放題なのである。元来小食な方なのだが、今日一日で使ったエネルギーを補充するかのようにカレーを2杯。美味しかった。本当に美味しかった。 食後は暮れ行く夕日を眺めつつ、19時過ぎに就寝。
眠れん。 すぐ両隣に男が寝ているというのもあるが、疲れて興奮してしまっている為か中々寝付けない。小屋の中は既にあちらこちらでいびきが鳴り響いている。結局23時過ぎまで眠れなかった。 午前1時過ぎに目が覚める。 何とか2時間ほどは眠れたようだ。昨日は徹夜の運転、今日は2時間。大丈夫か、こんなに寝不足で。 周りはもう既に半分ぐらいはいない。ご来光を見に行く為ではあるが、とにかく朝が早い。眠い目を擦りながら用意を済ませ、いざ出発。外は真っ暗。だが、宿から見える静岡の夜景は美しかった。 真っ暗な登山道をライトを頼りに登り始める。 幸いこの富士登山にあわせてライトを新調していたので良かったが、なければ本当に何も見えない。お勧めは頭に付けるヘッドランプタイプだが、買ったのはカバンなどに付ける事ができるもの。見上げれば幾つかの明かりが前方を歩いている。 一応山小屋で休養したつもりだったのだが、やはり前日の疲れが思った以上にあり、歩き出してすぐに疲れてしまった。 真っ暗な道を歩く。さすがに標高3300mを越えているので、やや空気が薄い事を感じる。とは言え、まだまだこの程度は「十分にある」方だ。ネパールでの経験で、自分の限界を知る事ができたようだ。
突然傾斜がきつくなりり、遥か前方を動いている明かりの列が壁のように列を作っている。「きついな」、何度もこの言葉が口をつく。もはや余裕などはない。体力というよりは、まさに気力で登っている感じだ。自分の足が自分の足でない感覚。何かに操られて自然に足が動く感覚。無意識か。意識して足を動かしていたら、この疲れに押しつぶされてしまうだろう。でも、不思議と眠気がないのには驚いた。 この頃から少しずつ月が出てきてやや明るくなってきたが、それでもまだライト無しでは歩けない。登山道も山頂近くという事もあり、溶岩むき出しの岩や、たくさんの石ころが転がっている。道には酸欠の為か、疲労の為か、道に座り込んでいる人もかなりいる。休憩しては進み、休憩しては登る。今日も昨日同様、登り一辺倒の気つぃ行程だ。 東の空がうっすら明るくなってきた。時計は午前4時を回っている。急がなくてはご来光が見られない。 山小屋を出て2時間、少し先に鳥居が見えてきた。どうやら山頂のようだ。今日も長かった。痛む足を鞭打ち、人の集まる方へ、ご来光の方へ向う。 「間に合った。。」 どうにかご来光には間に合ったようだ。東の空が明るくなるのを、多くの人と眺める。寒く感じたので、インナーダウンを着込む(気温4度)。足は前い思いっきり延ばして座る。これが疲れた足に何と気持ちいいことか。 そして、ご来光の見事なショーが始まった。
美しかった。 大袈裟かもしれないが、これまで見てきた日の出の中で最も美しい朝日だった。周りからも歓声が上がる。「きれい」とか「おおっ」とか。そんな歓声も心地よいご来光だ。この2日間苦労してきた事がこれで報われたような気がする。
ご来光を堪能した後、火口を見学、そして日本で一番高い場所、剣が峰(3776.5m)へ向った。そう、山頂にあるこの頂、この頂こそが日本最高地点なのだ。ここに行かずして富士山に登った事にはならない。十分に休養した後、再度出発。 距離こそそんなにないのだが、「馬の背」と呼ばれる急な上り坂が登山者に襲い掛かる。急だけならまだいいが、滑ってしまい登るのに非常に気を遣う。 何とか苦労して登り、気象所がある上り口に向う。そこには既に多く人が列を作っていた。日本最高地点での写真撮影の為だ。
これでとりあえず心残りはなくなった。目標達成である。 帰りは山頂にある郵便局で友人に絵葉書を出す。「富士山山頂」という特別なスタンプが押される。ちょっと嬉しいかな。
今日は昨日と違って、もの凄い快晴だ。雲ひとつないとはまさにこのこと。高度が高い分、空も以上に青く映る。「登りがきついところは、下りもきつい」。これはネパールで身を持って知った事だが、この富士登山でも同じであろう。山小屋までの登山道は、やはりそれなりに辛いものであった。美しい景色が本当に救いであった。 09:00に山小屋に到着。 この時間には既に多く人がチェックアウトして、昨日のような賑わいはなくなっていた。とりあえず朝食。ご飯に味噌汁、目玉焼きにハム、そして漬物などがつく。昨夜のカレー同様、味噌汁とご飯は食べ放題。嬉しい限りだ。 10:00に山小屋を出る。 それにしてももの凄い快晴。下山の為か疲れも、眠気もほとんど感じない。いざ出発。 御殿場口の下山と言えば、「大砂走り」が有名だ。急斜面を飛ぶように下る、下山方法だ。7合目の砂走り館で昨日押し忘れていた焼印をしてもらい、いよいよ砂走り。これが楽しかった。 この7合目からずーーとほぼ麓まで、ほぼ砂走りが続く。急斜面に、ざくざくと深く埋まる砂。だからかなりのスピードで、大股で下っても足への負担もないし、何もしなくても自然とスピードがつく。最初は慣れなくても、しばらくするとみんな砂走りを始めている。
それにしてもいい天気だ。昨日見えなかった御殿場口のコースが一望できる。出発の大石茶屋から、赤石八合館まで見えるほどだ。遠くには山中湖も大きな姿を現している。こんな日に富士に登れたらとても楽しいだろうが、暑さの疲れも相当だろうと思う。 予想よりも大変だった御殿場口登山が無事終わった。
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